現在のフランスの政治制度である第五共和制は、1958年シャルル・ドゴールによって確立された。

 1958年、フランスは、植民地アルジェリアの独立問題をめぐって、右派・軍部と政府との間に深刻な対立が生じ、政治的機能不全に陥った。このとき登場したのが、第二次世界大戦におけるレジスタンスの英雄、シャルル・ドゴールであった。ドゴールは、国益という観点から、彼を支持した軍部の期待に反して、アルジェリアの独立を達成するため、憲法改正に着手した。大統領に権限を集中させることで、強力なリーダーシップを可能にさせ、この難局を乗り切ろうとしたのである。こうして、1958年10月、第五共和制が発足し、その初代大統領となったドゴールは、植民地維持を主張する軍の反抗を抑え、フランスからのアルジェリア分離に成功した。軍は、期待のドゴールに、結局裏切られたことになったわけである。戦後のフランス政治は、植民地に対していかなるスタンスを取るかによってなかば決定されたといいうる。それは同時に、政治における軍の発言力をいかに抑えるか、という問題でもあった。アルジェリア独立にいたるまでのドラマ、またこの後につづいて展開するドラマには、人間の愚劣さ、貪欲さ、すさまじいまでの暴力性、凍りつくしかない理想主義、過酷な政治闘争、利害を見えなくする深い執着と未練、大衆の愚かしさと悲しさ、などなど、ありとあらゆる人間と人間社会の負の側面を見ることができる。しかし、ともかく、フランスもアルジェリアも、ついには理性と勇気ある行動によってそれを乗り越えた。われわれはここで払われた莫大な犠牲を、日本の敗戦の場合と同様、人類普遍の教訓として記憶すべきかと思う。

 第五共和制の成立によって、フランスの政治制度の枠組みは、政治の大枠と外交を一手に荷う強力な大統領と、主に内政を担当する内閣、という構成をとることになった。内閣を主宰する首相は、大統領によって任命されるが、円滑な内政運営のために、一般に国民議会(衆議院に当たる)の最大勢力の党首が首相に指名される。そのため、時に、対立する党派の党首が大統領と首相を分け合って一緒に国家の運営に当たるという事態が起こる。これを「コアビタシヨン(同居の意、保革共棲)」といっている。

 大統領は、国民の直接選挙による2回投票制で選出される。しかし、もし第1回投票で過半数を制した候補が出なければ、上位2名による第2回投票が行われる。興味深いことは、第1回投票の一位が、必ずしも第2回投票で優位であるとは限らないことで、第3位、第4位の候補者が、誰を支持するかによって、しばしば当選が左右されることである。したがって、第1回投票で敗れた候補者も、「支持」という政治的取引を行うことによって、彼の政治目標の一部を実現させることができる。候補者は、一般に政党の党首であるから、諸政党の意見を政治に反映させるということを考えれば、これはなかなか合理的な制度と考えられる。これまでの選挙を見る限り、1回の投票で大統領が決まることはまずない。アメリカの大統領選挙と比べれば、フランスの選挙制度は、国政についてのさまざまな意見があるていど柔軟に取り入れられる仕組みになっている、といいうるだろう。

 大統領の任期は、当初7年、就任は2期を超えてはならない、という規定であった。しかし、2期14年はあまりに長すぎる、との大勢の意見から、2002年5月、2期目の大統領に当選したシラク自身によって5年に改正された。

立  法  LEGISLATION

 フランスの議会は、日本と同様、2院制である。日本の衆議院に当たる国民議会は定員577名、任期5年、直接選挙で選ばれる。一方、参議院に当たる元老院は、日本とかなり事情をことにする。定員321名で任期9年、直接選挙ではなく、代議士、地方議会議員などによる選挙人団が選出する間接選挙で、3年毎に3分の1を改選する制度となっている。かつて、貴族たちが議席を占めていた時代の名残りが、いまなおこの制度の中に残っているように思われる。

フランス国民議会 Assemblee Nationale

定員 577名

任期 5年

フランス国民議会ホームページ

: http://www.assemblee-nationale.fr/

元老院 Senat

定員 321名

任期 9年(3年毎、3分の1改選)

元老院ホームページ: http://www.senat.fr/

司  法    JUSTICE

 フランスの裁判制度は、きわめて複雑である。まず、民事・刑事の裁判権と行政裁判権とが分離されている。つまり、一般的な裁判は司法裁判所が行うが、行政に関する訴えは、別個の組織の裁判官が担当し、日本の最高裁に当たる裁判所の頂点も、それぞれ破毀院とコンセイユ・デタとに分かれている。このように司法裁判と行政裁判とを分離するにいたった背景には、結果的にフランス革命の口火を切ることになった高等法院の例から分かるように、しばしば行政と真っ向から対立した司法の歴史があるからである。裁判所ができて以来今日まで、あまりに行政に追随しているように見える日本の裁判所と比較すると、フランスの裁判所は、実に果敢に政治と戦ってきたように思える。ただし、その果敢さが、革命期、歴史の流れを阻止しようとする反動的動きとなったために、現在の制度となった。政治に左右されない司法独自の理念に従った判断をほとんど打ち出さない裁判所も問題だが、時流に取り残されて独自の判断に固執する裁判所も問題、というわけで、理想的司法はなかなか難しいようである。

 つぎに、裁判所には普通裁判所と特別裁判所がある。特別裁判所は、法律によって規定されたいくつかのジャンルの裁判のみを、専門家以外の裁判員を入れて、裁判する。商事裁判所 tribunal de commerce、労働裁判所 conseil de prud'hommes、農事賃貸借裁判所 tribunal paritaire des baux ruraux、社会保障第1審委員会 comission de premiere instance de la securite sociale、少年裁判所 tribunal pour enfants、などが特別裁判所である。この裁判所が担当する訴訟以外の訴訟は、普通裁判所が担当する。しかし、この普通裁判所もまた、日本に較べると多くの種類があり、それを説明することは、実に煩瑣であるそこで、第一審級裁判所には様々な種類があるが、大きくは民事裁判所と刑事裁判所の二つに分類される、という概略を述べるだけにとどめておきたいと思う。

なお、第二審を担当する主要な裁判所は、

控訴院 Cour d'appel (日本の高等裁判所に当たる)

第三審は、

破毀院 Cour de cassation (日本の最高裁判所に当たる)

である。

左の写真は、パリのシテ島にある裁判所の建物。破毀院もこの中にある。ちなみに、かつてここには王宮があった。そのため、フランスで最も美しいステンドグラスといわれるサント・シャペル礼拝堂(写真左)が、破毀院と同じ敷地内にある。

 

国土 : 54万4千 km2 (日本 37万8千 km2) 

人口 : 約6,600万人(日本1億3千万人) /2015年

GDP : 約348兆円(世界5位/日本572兆円 3位・・・米、中、日、独、仏、英の順) /2014年

一人当たりのGDP : 約495万円 (世界22位/日本 560万円 12位) /2012年

平均年収 : 約397万円/1ユーロ135円として (日本人408万−男502万・女268万/2013年)

・・・Le Figaro 紙2014年3月13日の「2013年第4四半期月額平均所得 2449ユーロ」との記事から 

 

      

  ■ フランスの4大河川 (濃緑の線)
1.ロワール河 la Loire   1012 km
2.ローヌ河 le Rhone      813 km
3.ガロンヌ河 la Garone   645 km
4.セーヌ河 la Seine      563 km

 

■ フランスの最高峰=ヨーロッパの最高峰 (緑の四角)

モンブラン 4807 m

■ フランスの地方都市 (赤丸)

1.マルセイユ  Marseille  約 79万人

2.リヨン Lyon  約 45万人

3.トゥールーズ  約 39万人

4.ニース  約 34万人