第1章 交通とは何か

SUB-CONTENTS
1節 交通論事始め 2節 交通用語 3節 交通の意義
4節 交通サービス 5節 運輸業の概況  

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 交通は、私たちにとってひじょうに身近な存在です。小さな子供が最初に抱く社会への関心は乗り物です。物心つかない幼児にとって、乗り物の「何が」そんなに魅力なのでしょうか、よくわかりません。私も、小学生の頃修学旅行で初めて汽車に乗ったときの、あのなんとも言えない高揚した気分を、今もなおはっきり記憶しています。理由まではわかりません。しかし私は、大きくなって、乗り物が嫌いになってしまいました。長時間乗っていることがなんとも退屈なのです。今や、理想の乗り物はドラエモンの「どこでもドア」だと、考えるようになりました。どんな犠牲を払ってでも手に入れたい、冗談ではなく真面目です。私は究極の「交通不要論者」ということになるのかもしれません。

 不要論者が、なぜ交通を研究し、教室で講義するのか、不審に思われるかも知れない。およそ世の中に存在するもので、不要と断言できるものはほとんどないと言ってよいでしょう。ほとんどのものには存在理由があり、必要性が社会的にも認められたものばかりです。交通機関や交通企業もそうです。交通は社会的に必要欠くべからざるものの典型といってよいでしょう。それなくして、日常生活がひじょうに不便になるばかりでなく、ときには私たちの生存さえも脅かされてしまいます。能率的な交通の確保は、社会が発展していくための必要条件なのです。


 

第1節 交通論事始め

DETAIL
(1)交通論の学び方 (2)交通の3要素 (3)交通の類型
(4)交通システム (5)交通機関特性 (7)個人消費支出
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(1)交通論をどう学ぶか

  1. 交通論には、経済学的側面、経営学的側面、地理学的側面、社会学的側面、工学的側面といったように、いくつかの側面がある。
  2. この講義では、主として経済学的側面と工学的側面から交通を考える。
  3. 内容的には、交通に関わる現実、その事実を分析するための考え方(技法)、そして私自身の見解を紹介することに務めたい。
  4. この講義を理解するためには、高校程度数学の知識が必須である。また、ミクロ経済学に関する入門レベルの知識も必要である。折りに触れて復習してもらいたい。
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(2)交通の3要素と生産概念

    [生産の概念]
    1. 技術的概念:物質とエネルギーを素材にして、技術的方法によって、新

    2.       しい物質およびエネルギーを作り出すこと。
    3. 経済的概念:生産手段の技術的結合により、新たな効用を創出すこと。

    4.       効用には場所的効用、時間的効用、社会的効用がある。

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(3)交通の類型

  都市圏=1日生活圏
     :人々の終日の行動範囲(この範囲内で大部分の人々の通勤通学が行わ
      れる)。1日生活圏を都市交通圏、転じて都市圏と言う。

  都市間物的流通における鉄道と自動車の50%分岐点(距離)は、130km(1965)
  から200km(1970)に長距離化した。

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(4)交通システム

システム   交通機関    旅客輸送      貨物輸送
       トラック           都市間・地域:小口貨物、コンテナ
      自家用乗用車  都市間・地域  手荷物のみ
 道路     バス    都市間・地域  都市間サービスの小荷物
       自転車    地域・余暇   ばら荷・大口貨物・コンテナ
 鉄道   JR・私鉄   500km未満都市間通勤
      市電・地下鉄  地域・都市内
      中・大型航空機 500km以上都市間 長距離の高価品・コンテナ
 航空           海外
      小型航空機   都市間:余暇・業務
 水運     外航    巡航のみ     バルクカーゴ・コンテナ
        内航    フェリー     バルクカーゴ
 その他  パイプライン          石油・天然ガス(長・短距離)
      ベルトコンベア         15q未満の荷役
            出所:Handbook of Transport Engineering ,P.12

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(5)交通機関の特性比較

     大量性(a) 迅速性(b) 経済性(c) 安全性(d)
地下鉄   4,320人  25km/h  3.6円   0.008件
郊外鉄道  5,600人  40km/h  2.3円   0.04件
乗合バス  1,050人  15km/h  4.1円   0.43件
乗用車    306人  18km/h  13.7円   0.53件
モノレール 2,400人  35km/h  7.9円   0.000件
         備考:(a)幅員1m、1時間当たり輸送人員 (b)平均時速
            (c)1km当たり輸送コスト (d)走行10万km当たり死傷事故発生件数
         出所:運輸白書 昭和46年版 (2-3-1)表

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(6)個人消費支出の構成(1979年)

国 名
一人当り個人消費支出
主な消費支出の構成費(%)
食料費
被服費
住居光熱費
医療費
交通通信費
教養娯楽費

カナダ

  6,519   20.9  7.7  27.1   3.1  15.7   9.7
アメリカ   8,085   16.5  6.9  26.7  11.6  17.1   8.2
日本   5,547   25.2  7.2  23.6   9.8   9.6   9.0
インド  a) 138   59.6 10.9  11.5   2.2   7.5   3.6
韓国   1,099 b) 53.8  9.2  12.0   4.8   7.1   5.7
ベルギー   6,351   24.9  6.7  30.1   9.0  12.2   4.7
オランダ   5,978 b) 22.6  8.9  24.6  11.8  11.8   8.9
フランス   6,856 b) 23.0  7.0  25.5  12.2  13.0   6.7
ドイツ   6,272   26.8  9.6  29.1   3.4  15.8   7.6
イタリア   3,831 c) 35.0  9.1  19.1   8.1  12.2   5.7
スウェーデン   7,094   24.1  7.9  32.8   2.3  14.0  10.4
英国   5,450   24.1  7.7  26.3   1.0  14.0  11.2
豪州   6,864   25.4  7.3  26.6   6.3  16.1   6.8
      備考:1人当たり個人消費支出(ドル)は1981年 a)1979年 b)1978年 c)1977年
      出所:東洋経済新報社「経済統計年鑑」1983年版

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第2節 交通用語の解説

DETAIL
(1)言葉の定義 (2)交通関連用語 (3)物流と交通
(4)距離の概念 (5)時間価値 (7)情報の伝達
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(1)言葉の定義

  1. 交通とは、人と物の場所的移動及び情報の伝達(=空間的離隔の克服に関わる行為)をいう。
  2. 米・英の transportation は人と物の場所的移動だけをさし、情報の伝達を communication と呼んで区別している。
  3. 独の Verkehr では情報の伝達も含む。
  4. 日本では事実上英・米にならって人と物の場所的移動だけをいう。
  5. 交通にはそれを提供する者、つまり交通サービスの生産者または供給者が存在する。これを《交通の主体》という。従って、海に流れ込む川の水や、洪水による土砂の流出には主体がないので、交通とは言わない。

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(2)交通関連用語

  1. 輸送:車や船・航空機等で人または物を送ること(広義)。

    1. (狭義):保管、包装、荷役、流通加工と並ぶ物流構成要素の一つ。
      (総称):交通と同意。
      (参考)旅客及び貨物を主として鉄道・自動車・汽船・航空機によって
          運び送る事(以上「広辞苑」による)。
  2. 運輸:官庁行政用語(経済での常用語ではない)。

  3. 運送・運搬・通運:(法律用語)これらはどれも似通った意味合いで使われ

  4.           るが、正しくは区別される。
  5. 運送=貨物または旅客を一定の場所から他の場所に送り移すこと

  6. 運搬=人や物を運び移すこと

  7. 通運=貨物の運搬・運送を言う。
  8. transportation
    ・the action or process of transporting, conveyance ( of things or persons) from one place to another. (Oxford English Dictionary)
    ・the act of carrying, or the state of being carried, from one place to another. (開拓社「英々辞典」)
  9. transport

  10.  (a)to carry, convey, or remove from one place or person to another.
     (b)to convey across.(以上、Oxford English Dictionary)
  11. traffic
     (a) the movement of people and vehicles in a street.
     (b) the business done by a railway, steamship Line etc. (以上、開拓社「英々辞典」)

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(3)流通(物流)と交通

  1. 流通は、物流と商取引流通という二つの活動から構成される。
  2. 前者には有形の物流と無形(エネルギー・情報)の物流がある。
  3. 物流活動(有形財)は、輸送・包装・荷役・保管・流通加工という五つの活動から構成される。
  4. 流通と交通の相違点として、次の2点が挙げられる。

    1. 交通の主体は交通サービスの供給者であるのに対し、物流の主体はその需要者である。従って、後者は生産者の側から本源需要が起こる。

    2. 流通には,空間的離隔を克服するだけでなく、時間的離隔を克服するもの倉庫)や、社会的離隔を克服するもの(配給業)もある。

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(4)空間的離隔(距離)の概念

  1. 空間的離隔はたんに「物理的な長さ」というだけではなく、次の図で示すような意味もあわせもっている。

  2. 交通経済論が問題にする距離の概念は経済的距離である。
  3. 交通の歴史は、人間が経済距離の短縮をめぐって行動してきた歴史である。
  4. 最近の高速交通施設(高速道路や新幹線)の建設推進は、経済距離ことに時間距離の一層の短縮を目的としたものに他ならない。
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(5)時間価値とは

 利用者が時間の節約によって受ける何らかの利益を時間便益(time benefit)と呼ぶが、これを貨幣額で評価したものを時間価値という。

〔時間価値の評価方法〕

    1. 費用接近法

      1. 時間の節約と引き換えに, 利用者が支払ってもよいと考える費用、つまり節約時間の機会費用(opportunity cost)による評価をおこなう。この方法にはセント・クレア法, 利用率法がある。

    2. 所得接近法

      1. 節約された時間を所得の稼得にあてた場合に得られるであろう所得の増分を評価値とする方法である。
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(6)情報の伝達手段

伝達手段
中間路
ターミナル
移動形態
情報蓄積
伝達速度
伝達範囲
情報量
電信電話
ケーブル
電話局
電気信号
不可
早い
広い
少量
郵便
交通路
郵便局
現物
遅い
広い
少量
印刷物
同上
 
現物
遅い
広い
多量
口コミ
空中
空気振動
不可
早い
狭い
少量
コンピュータ
ケーブル
電算機
電気光信号
早い
狭い
多量

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第3節 交通の意義

DETAIL
(1)交通の必要性 (2)経済的・流通的意義 (3)交通と生産効率
(4)政治的意義 (5)交通と国際化 (6)文化的意義
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(1)交通の必要性

  1. 交通は、空間的離隔という地理的障壁を乗り越えるための手段にすぎない。
  2. しかしそれは、国家や地域の経済のみならず、政治や文化とも密接に関連しており、その発展が交通環境の良否に左右される度合いは決して小さくない。
  3. 経済との関連において交通を見ると、第一に、各地の地理的条件の多様性と経済発展のための生産特化の必然性が、交通を必要不可欠な存在にしている。
  4. 第二に、交通は、規模の経済の実現のための重要な要因の一つである。
  5. 地球上のどの場所をとっても、その地理的条件は変化に富み、多様である。
  6. 資源の地理的分布も一様でなく、偏在しているために、どの地域や地区もそこに住む人々が望むすべての財を自給することはできない。
  7. 我々は、自ら彼の地に出かけて購入するか、さもなければ当地まで輸送されてきたものを購入するかのいずれかの方法でしか、必要とする財を調達することはできない。
  8. こうした地理的条件の多様性は、交通を経済的に必要不可欠なものにしている。

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(2)交通の経済的・流通的意義

  1. 生産過程に含まれる輸送の効率を通じて、生産能率を上げる。

  2.  例:農林業:農道、馬車、トラック、ジープ、トラクター、コンバイン
           林道、トラック、森林鉄道
       鉱業 :各種運搬機
       製造業:原料や完成品等の輸送は生産の中枢部分を占める。

  3. (地域的)分業の促進を通じて

  4.    純粋単純分業=集団社会内部の専門化と工場内部の専門家
       地域的分業=国際分業も含む工場間分業

  5. 労働供給圏の拡大 :労働力の供給を増大させ、専門家を促進する。
  6. 立地の自由度を増す
  7. 市場の創出    :交通圏は販路を規定する(trade follows flags)
  8. 価格の地域的平準化:全国・国際統一価格の形成を可能にする。
  9. 価格低廉化への貢献:在庫量の削減。
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(3)交通と生産効率

  1. ある場所に産する資源を投入して別の場所で生産し、さらに別の場所で消費する経済的現象を生産特化または地理的分業と言う。
  2. それは、迂回生産とともに、経済の成長・発展と密接な関係をもっている。
  3. 経済の成長・発展を持続していくには、恒常的に迂回生産を拡大し特化を進行させることが必要である。
  4. その過程で、交通サ−ビスの質を向上させる必要性が一層高まってくる。
  5. 生産特化と迂回生産に対して交通が不可欠であると言われる由縁である。
  6. 良質な交通サ−ビスは、規模の経済を実現するためにも重要である。
  7. 規模の経済とは、一つの財をより大量に生産すると平均生産コストが低下する経済的現象である。
  8. しかし、工場における生産技術だけを改善したとしても、規模の経済は実現されない。
  9. 生産量と消費量は絶えず均衡に向かって変動するものであり、大量生産を行うためには、大量輸送をともなう大量販売が必要不可欠だからである。
  10. 技術的・経済的に例え他の二つの大量性が実現可能だったとしても、能率的な大量輸送が実現されなければ、規模の経済も実現できないわけである。
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(4)政治的意義

  1. 我々は、交通がもつ政治的、文化的機能について日頃意識することはほとんどない。
  2. 日常生活が余りにも交通と密着しすぎているせいなのかも知れない。
  3. しかし、軍事面を含む政治と交通との密接な関わりは、歴史が雄弁に物語っている。
  4. 古来、国家は、軍事的には国土防衛力を高め、時には自国領土の拡張を図るために、そして政治的には中央集権化を促進して支配権を強固にするために、絶えることなく交通体系の整備に努めてきた。
  5. 古くは、古代ロ−マ人が″すべての道はロ−マに通ず″と言われるほどに道路整備に力を注いで完成させた「ロ−マ道」や、中世欧州の「荘園道路」および「ギルド道路」がその例である。
  6. 近代では、ヒトラ−によって建設が開始された「アウトバ−ン」や、戦前の主要国による海運・造船業および自動車製造業に対する手厚い保護政策もその例である。
  7. 現在の多くの交通機関は、その発展の初期において軍事上の理由から、国家の保護育成措置の適用を受けてきたのである。
  8. さらに、航空機や船舶などその時々の先端技術の結晶である交通の可動設備は、国力と国際的ステ−タスを象徴するものであり、国威の発揚に資するものと考えられてきた。
  9. そのため、国策として、自国の経済力を越える高価な交通施設を、経済性を考慮せずに保有するケ−スも珍しくなかったのである。
  10. 現在でもなお、一部の発展途上国では、経済性のない国営航空会社や国有商船隊を保有している例が見受けられる。

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(5)交通と国際化

  1. 交通が未発達な社会では、他の社会集団とはもちろんのこと、その内部においても人的交流は限られている。
  2. 交通の発達は、異なる社会集団との関係を緊密化し、地理的に離れている人々との相互理解を深めるのに貢献する。
  3. 近年、わが国では海外旅行者の数が、ほんの10年前には考えられなかったほどに激増している。
  4. その目的は、単なる観光から、教育・研究やスポ−ツ、文化の国際交流などさまざまであろう。
  5. 四方を海に囲まれたわが国は交流が十分でないために、ともすれば国際的に誤解を受けたり、孤立したりすることが過去にいくどかあった。
  6. わが国は他国との関係を絶って存立することは不可能なのだから、さまざまな目的をもった国際的な交流を今後も一層推進し、異文化の相互理解に努めねばならない。

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(6)文化的意義

  @文化伝播の媒体:人の移動や情報の伝達を交通が仲介することによって
  A文化創出の担い手:馬車文化、自転車文化、自動車文化

[馬車文化について]・・・参考文献:ブリンク著「馬車文化」

  1. わが国では歴史上とりたてて見ることはできないが、欧米諸国では馬車の利用が隆盛を極め、一つの文化を形成するほどの時代があった。
  2. しかし、その裏面には現代社会に通じる公害問題も発生していた。
  3. 19世紀末のニューヨーク市内では、馬の排泄物が毎月1134トン(糞)227kl(尿)、遺棄死骸は年に15,000体に達したという。
  4. 馬糞は路上の塵埃と混ざり合い、蝿を媒介とした赤痢等の伝染病の温床になった。
  5. 破傷風菌が馬の飼料にまじって、都市に持ち込まれた。
  6. 市民は、馬車の車輪がもたらす騒音によって、ストレスや心身の緊張を余儀なくされた。
  7. 貸馬車屋の経営者や使用人に伝染病羅病者が多かったと言われる。
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[自転車文化について]・・・・参考文献:佐野著「自転車の文化史」

  1. 保有台数:5516万台(日本2.2人/台=昭和58年)850万台(昭和10年代)

  2.      同年の自動車台数は4300万台、電話4150万件
          自転車の輸送能力:平均時速約15km、荷載能力100kg(実用車で)
          実用車とは   :統計上自重17kg以上の自転車(普通の自転車12〜15kg)
          エネルギー消費効率 :各種輸送機関の中で抜群に高い、歩行エネルギーの五分の一

  3. 各国の自転車生産と保有の状況

  4. 国名  生産量  国名   生産量   国名  保有台数  国名  保有台数
    米国  507.0(82) 伯   218.5(82) オランダ  1,000(1.4) ベルギー 347(2.8)
    日本  653.2(82) 豪州   37.7(82) フィンランド  350(1.4) ハンガリー 350(3.1)
    英国  128.8(82) 印度  383.7(80) スウェーデン  550(1.5) フランス 1,700(3.6)
    西独  308.9(82) ソ連  542.0(79) デンマーク  330(1.6) イタリア 1,550(3.6)
    フランス  211.2(82) ポーランド 131.7(81) 西独  3,650(1.7) 英国 1,200(4.0)
    イタリア  230.0(82) 台湾  315.7(80) ノルウェー   220(1.9) ソ連 4,000(6.3)
    オランダ  92.8(82) 韓国   77.6(80) 日本  5,363(2.2)
    ベルギー 27.1(82) 中国 2,413.3(82) 米国  9,500(2.3)
    カナダ 44.0(82) 豪州   300(2.5)
              単位:万台(調査年)        単位:万台(保有率=人/台)

  5. わが国の自転車普及プロセス

    1. ア)自転車の初上陸時期:明治維新前後(前輪駆動のミショー型=ボーンシェーカ)
      イ)舶来車の上陸と同時に、模造国産車が出現(田中久重=東芝の祖)
      ウ)貸し自転車業の断続的流行(明治初年〜同20年頃)
        :交通手段でもなくスポーツでもなかったので、”物好きの道楽”危険な玩具とみなさ
         れていた。

      エ)セーフティー型登場(明治17〜8年頃):宮田製銃所で試作
      オ)自転車は当時の花形耐久消費財であり、日清戦争後の時代(1897,明治
       30年頃)に、「将来、自転車と電話をもてるような人でなくては」と
       いうのが、上流階級の女性から見た結婚相手の条件であったという。
      カ)国産自転車の登場(日露戦争後1904〜5年)
      キ)輸入車価格=150〜250円(米価を基準に現在の450〜750万円に相当)
       国産車価格=100円(最高級車):大半は数十円だったという。

  6. 自転車のタイプ

    1. ア)ドライジーネ型:江戸後期、文政年間に、ドイツ人ドライス男爵が開
               発した。ペダルもクランクもなく、自分の足で蹴っ
               て進む型であった。
      イ)ミショー型  :ペダルとクランク付きの前輪駆動車、1861〜3年頃に
               開発された。
      ウ)オーディナリ型:前輪が次第に大きくなっていった。途中でソリッドゴムタ
               イヤが装着された。
      エ)セーフティ型 :19世紀末に登場した、チェーンを使用した後輪駆動
               である。1884〜5年頃に欧州で完成した。

  7. 自転車競争

    1. 1867年にパリ・サンクールで、距離1200mで行われたのが世界最初である。使用された自転車はミショー型

    2. わが国では、1901年(明治34年)に上野不忍池で第1回全国連合自転車大会が開かれた。
  8. タイヤの発達

    1. 1739年:ブラジル原住民が長靴にゴムを塗って防水しているのを、仏人コンダミンが目撃。

    2. 1845年:英人トムソンが空気入りのタイヤを発明

    3. 1888年:英人獣医ダンロップが空気入りタイヤを発明し、セーフティ型自転車に装備

    4. 1877年:ミシュラン社(仏)がはめ込み式空気入りタイヤを開発
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第4節 交通サービス

DETAIL
(1)serviceの語源 (2)交通サービスの特質 (3)交通サービスの即時性
(4)未使用能力の必然性 (5)自己運送の一般性 (6)交通の公共性
(7)サービスの評価基準    
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(1)サービス(service)の語源

  1. Servitium(屈従、従順、奴隷状態を意味するラテン語)に由来し、現在独・仏語でそのまま使用されている。
  2. 本来の意味は、医師や弁護士、官公吏、ダンサーが提供するもののように、人的なサービスだけに用いた。現在は、有形財と無形財からなる経済財に対して、無形財を称してサービスと呼ぶ。
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(2)交通サービスの特質

  1. 若い世代を中心に、カ−マニアとかSLマニアと呼ばれる人達が多くいる。
  2. 年配の人の中にも、超大型のハ−レ−・ダビットソンのオ−トバイを、まるで我が子のように大切にして、乗り回している人達がいる。
  3. 彼らは、鉄道や船、飛行機、自動車にある種の″夢“や″ロマン″を感じているのであろう。
  4. しかし、このような人々はむしろ例外である。
  5. 一般の人々は、交通機関そのものに対して特別な感情をもっているわけではない。
  6. 余暇をより充実したものにするためとか、あるいはもっと良い条件の職についたり仕事をより能率的に行って高い収入を得ようとして、交通機関を利用して移動しているにすぎない。
  7. 貨物輸送も同様に、生産や販売の効率を高めるために行われている。経済の歴史は、交通の発達が生産と消費の分離を可能にし、そして生産活動の地理的・社会的特化をもたらして分業を促進してきたことを示している。
  8. 交通機関を利用した場所的移動、つまり交通は、それ自体が目的なのではなく、何か別の目的を実現するために付随して必要とされるものである。
  9. このような意味で、交通サ−ビスは中間財であり、その需要は派生需要である。
  10. しかも、多くの中間財がある特定の財の投入としてのみ利用されるのに対して、交通サ−ビスは他のほぼすべての財の中間投入として利用される。
  11. ここに、交通サ−ビスがもつ特徴の一つがある。
  12. 交通サービスと特質をあげれば、以下のようになる。

    1.    @即時財であること
         A未使用設備が必然的に発生すること
         B一般的な自己運送
         C公共性を有すること
         Dその生産において、固定費比率がひときわ高いこと
    以上の特質について、以下で詳しく述べることにしよう。

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(3)交通サービスの即時性(instantaneous goods)


  1. 有形財と無形財の価値実現の過程は、右図のように表現できる。
  2. 交通サービスをはじめとする多くの無形財は、生産される時が供給される時であり、さらに消費される時にもなる。
  3. したがって、(1)貯蔵不可能、(2)流通過程の欠如、(3)在庫不能という特質をもっていることになる。
(補論)即時性の克服と社会の発展

  1. 今日、交通サービスの利用者(需要者)は、生産者・供給者と別個な存在である。
  2. かっては今よりも即時財は多かった。
  3. 例えば、芝居やスポーツ試合はその時間にその場所へ行かねば見ることはできなかった。見過ごせばそれっきりだった。
  4. しかし現在では、テレビやラジオ、VTRがその即時性を大きく減じた。
  5. 現在でも強い即時性を持っているのは、交通のほかでは電力がある。
  6. 電池は電力保管装置であるが、超電導技術が確立されれば、私たちの社会ははるかに住み易くなる。
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(4)未使用能力(unused capacity)の必然性

 [未使用能力が不可避な理由]

      @交通需要が、時間的にも場所的にも不規則的に発生すること

      A需要変動に応じて供給単位を変更しがたいこと

      B交通手段の3要素に対する投資がともすれば均衡を欠くこと
       自動車と道路、港湾諸設備と船舶、空港施設と航空機など管轄する行政
       主体が異なることにある(運輸省と建設省)。

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(5)自己運送の一般性

  1. 今日、交通サービスの利用者(需要者)は、生産者・供給者と別個な存在であるのが普通である。
  2. 経済の歴史を紐解けば、生産形態は、自己生産から注文生産、そして18世紀の産業革命で本格化した商品生産へと変化してきた。
  3. 一般の財に関して、現在は、明らかに商品生産が普通の時代である。

[自己運送:private carrier]

  1. 交通サービスの生産も、当初は、自己生産という形態で行われた。
  2. フェニキア人の流れをくむギリシャや、イタリア海商都市(ヴェニス・ジェノア・フィレンツェ)、ハンザ同盟都市の商人達は、自ら交通手段(船舶)を所有して貿易を行った。
  3. 彼らをマーチャントキャリア(marchant carrier)という。
  4. ちなみに、ギリシャ商人には三つのタイプがあったといわれる。
  5. 一つは上のタイプでありナウクレロス(naukleros)という。
  6. 他の二つは、居住地を離れないで商品売買等の商行為を営む者:カペロス(kapelos)、ナウクレロスの船に同乗して自己の商品を輸送し、商行為を営む者:エムポロス(emporos)である。
  7. 海上輸送だけでなく、出現当初の運河や鉄道もすべて自己生産の形態をとった。
  8. 最初の商業用運河は、Duke of Bridgewaterの資材によって建設されたし、英国の初期鉄道は採鉱業者の私的輸送手段であった(coal line or mineral line)。
  9. 米国最初の鉄道(1826〜7)は炭鉱会社が石炭を運河まで輸送するために建設された。(自己の輸送手段で自己の商品を運送する製造業者をインダストリアルキャリア=industrial carrierという)

[半他人運送:semi common carrier]

  1. 自己の運搬具に余裕が生ずると、一緒に他人の商品も一緒に積み合わせたり、一船または一車ごと他人の商品の輸送に供するようになる。
  2. 例えば、英国東印度会社等の勅許会社やハンザ同盟の船舶、フッガー家やロートシルト家の郵便輸送船舶は、こうした半他人運送を行った。
[他人運送:common carrier]

  1. 19世紀初期、商業(貿易業)や製造工業から完全に独立した、他人の商品だけを輸送する交通業が成立する。
  2. 成立の背景

  3.  @産業革命による生産力の著しい増強の結果、輸送貨物が大幅に増加した。
     A交通の技術が発達し、運搬具が大型化するとともに、その所有や維持に
      大きな資金が必要になった。

  4. 初期交通業:

  5.   Black Ball Line (1816年、北大西洋最初の定期航路開設、米国)
      Liverpool & Manchester Railway (1830年、英国)
      Baltimore & Ohio Railroad (1830年、米国)
      South Caroline Raiload (1830年、米国)

  6. 海上輸送の場合、プライベートキャリアからコモンキャリアへの発展に数千年を要したが、鉄道は産業革命の形成・成立後に出現した事情から、成立後まもなくコモンキャリアの形態をとった。
[ Liverpool & Manchester Railway ]
  1. スティーブンソンの Liverpool & Manchester Railway が特に有名なのは、次のような理由による。

  2.  @開通当初から貨客車の牽引を専ら機関車に依存した最初の鉄道であり、
     A当初から一般用の鉄道であり、旅客も運送する common carrier であった

  3. それまでの鉄道は、専ら炭坑の石炭輸送機関であった。
  4. もっとも、貨物輸送を主目的に敷設されたが、開通するや旅客が殺到してこれに乗車したために、貨物輸送が暫くできなかったといわれる。

[ common carrier 成立以後]

  1. 19世紀後期には、カルテル・トラスト・コンツェルンという諸企業の結合関係が生まれ、独占資本主義傾向が始まった。

  2. カルテル(cartel=企業連合)
      市場支配を目的とする企業間協定が結ばれる。
    トラスト(trust=企業合同)
      加盟企業は商業上・生産上・法律上の独立性を失う。
    コンツェルン(konzern):
      もっとも高次の企業集中形態であり、独占的産業資本と独占的金融資本
      を統合するものであり、持ち株会社が傘下企業の株式を所有し、融資や
      人的結合が見られる。

  3. トラストの対象として交通業が選ばれるとき、common carrier は private carier (industrial carrier, marchant carrier)となる。

    1. 例:シェル、エクソン、モービル、BP等の国際石油資本
        旧三井物産船舶部
      タンカー船腹構成
      世界 独立系船主(63.8%) 石油会社(35.8%)
      日本 専業会社 (85.1%) 石油会社(14.2%) 漁業会社( 0.7%)
         以上1976年末現在
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(6)公共性を有すること

    [公共義務の内容]

       1.輸送の安全性を維持・確保しなければならないこと
       2.運賃・料金を事前に公表しなければならないこと
       3.利用者を差別待遇してはならないこと
       4.輸送拒否(乗車拒否)をしてはならないこと

    [公共義務の由来]

      1. 中世英国の公共職業(common calling)に由来するといわれる。
      2. 当時の英国では、一般公衆に有償で特定のサービスを提供することを慣習的に業とした職業または事業すべてに対して、"common"という形容詞をつけて、合理的報酬で差別なくサービスを提供する義務(duty to serve)を課していた。
      3. それ以来、この考え方が現在まで続いている。
      4. duty to serve は、国王の官吏(public officer)の義務と一体をなしていたといわれる。
      5. 公共義務が課された当時の職業には、common carrier , common barbers , common tailors などがある。
    [公共性の根拠]

       1.社会的・経済的に必要不可欠であること
       2.外部経済効果があること
       3.交通サービス供給の独占性
       4.交通サービスの公共財的性格

    [社会的・経済的な必要不可欠性」

      1. 交通は、技術的・社会的分業を容易にし、ひいては経済の発達に貢献する。
      2. 交通投資は、社会資本の整備として行われることが多く、社会資本の充実は経済成長を促す大きな要因である。
      3. 交通に関わる社会資本を一般に交通インフラ(infrastructure)という。
      4. しかし、社会的・経済的に必要不可欠な財は交通のほかにも多くあるはずである。
      5. 必要不可欠であるか否かの判断は主観によるところが大きい。
      6. だから、社会的・経済的不可欠性だけから公共性の有無を判断するならば、非常に多くの財に公共性を認めねばならないことにもなる。
      7. 交通の公共性が言われるのは、必要不可欠性に加えて、交通サービスが輸入や移入が不可能という即時的性質を強くもっているからである。

    [外部経済効果があること]

      1. 外部経済効果〕とは、財やサービスの生産・消費にともなって生ずる便益で、当該生産者や消費者のいずれにも帰属しないものを言う。
      2. これには土地の開発利益がある。
      3. 外部経済効果がある場合、運賃収入だけを勘案した交通投資は、過小投資となる(その理由は各自考察しなさい)。
      4. 適正な交通投資を喚起するためには、この外部経済効果を何らかの方法で内部化する必要がある。
      5. 内部化の方法:交通企業が不動産業を兼業する。(これにより、地価上昇の利益は、交通企業の収入となる)
      6. 内部化が不可能な場合、(1)沿線受益者への課税と、(2)それを財源とした交通企業助成といった、公的市場介入(政府規制=regulation)が必要になる。

    [交通サービスの供給は独占的に行われること」

      1. 理由

      2. ア)明治期、瀬戸内海航路で海運企業の自由な競争が行われたが、そ
         の競争が激化した結果、運賃は無料になるばかりでなく、乗船者
         には手拭いまで配られたという。
         競争は、一方が倒れるか、両者共倒れするまで徹底的に行われた
         。競争に敗れた企業の巨額の投資は、全く無駄になってしまう。

        イ)交通企業の固定費比率は他産業の企業に比べて非常に高い。
           (民営鉄道50.43% 道路運送業47.54% 海運業73.46%
            運輸業平均58.57% 製造業30.85% 全産業平均35.29%)
         したがって、企業の規模が大きくなり、産出規模も大きくなる
         と、平均費用は大きく低下する。(これを規模の経済といい、
         このような産業を費用逓減産業という)。
         競争は、相対的に小さな規模の企業が共存している状態のもと
         で行われるわけであり、平均生産費も相対的に大きい。

      3. 資源の浪費を回避するためには、当初から独占を許容したほうが好ましい。
      4. こうした独占の形態を、私的独占に対して、自然独占という。
      5. しかしそれと同時に、独占利潤等の独占権の乱用を防止するために、運賃規制や参入規制、サービス規制といった公的規制を設ける必要もある。
      6. 資源の浪費を回避するための独占権の賦与と、それに付随する各種の規制は、公共性の名のもとに行われている。

    [交通サービスは公共財的性格をおびていること]

      1. 国防、警察、消防、公園、放送、燈台、道路などの各種サービスは、公共財(public goods)である。
      2. P. A. Samuerson は、私的財と公共財を次のように定義している。
         私的財 
         公共財 
             :社会全体の消費量 :個人の消費量
             :社会全体の消費量 :個人の消費量
        つまり、私的財では各個人の消費量を合計したものが社会全体の消費量になるのに対して、公共財では各個人の消費量は相等しく(等量消費)、かつまた個人の消費量がそのまま社会全体の消費量にもなる(共同消費)。

      3. 私的財は、「利用」することによってのみ使用価値が生まれるが、公共財はその他に「利用可能性」、「環境維持」といった面に使用価値を有する。

      4. 公共財の特質は、次のようにも表すことができる。

         (ア)非競合性:ある特定個人の消費は他人の消費と競合しない。
         (イ)非排除性:ひとたび公共財が供給されたならば、いかなる経
                済単位もその利用から排除されない。
         (ウ)非選択性:ひとたび公共財が供給されたならば、個々の経済
                単位は自由に数量的な選択を行いえない。
         (エ)不確定性:公共財の利用は不確実な事象に左右されやすい。

    [交通サービスが公共財的な性格を有すると主張される論拠]

         (ア)交通サービスの即時性
         (イ)社会的・経済的不可欠性

      1. 運賃・料金さえ支払えば、何時誰にでも利用できるようにしておくことが重要である。

      2. 公共財に関しては、有斐閣「公共経済学」を参照。

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(7)交通サービスの評価基準

  1. 交通サ−ビスの質の良否は、安全性や高速性、大量性、正確性、規則性、経済性、機動性、快適性等の観点から、輸送目的にてらして総合的に評価すべきものである。

  2. あえて優先順位をつければ、安全性と高速性が最も高く評価される。

  3. 前者は、特に人的交通において重要である。交通事故は現代の大きな社会問題の一つであり、交通サ−ビスの他のすべての質的側面に優先する。

  4. 移動は我々の生活を向上させるための手段にすぎないのであるから、移動手段の安全性が確保されなければ、″角をためて牛を殺す“結果になりかねない。

  5. したがって、交通サ−ビスの高速化は、安全性が確保される範囲内で実現されねばならない。

  6. しかし、交通の歴史は、一面において高速性を追及してきた歴史である。

  7. 現在、国内旅行でも航空機が頻繁に利用されるようになったし、新幹線よりさらに高速のリニアモ−タカ−を早期に建設せよとの要望も強い。

  8. 高速化は、社会発展の永遠のテ−マなのかも知れない。

  9. 正確性と規則性は、時間に関わる品質評価基準であり、経済性は、運賃や費用の水準に関わる品質評価基準である。

  10. 機動性は、時間、場所、移動の方向といったさまざまな移動ニ−ズに即応できる程度を基準として評価される。

  11. モ−タリゼ−ションの進展は、自家用自動車が公共交通機関、ことに鉄道を駆逐する過程でもあったが、このことは交通機関の質を評価する上で、機動性が重要な要因であることを物語っている。

  12. 自家用自動車のもつ優れた機動性が、鉄道の大量性や経済性よりも高く評価されたわけである。

  13. 機動性は高速性とも関連している。

  14. 高い機動性は、待ち時間や乗り換え時間をほとんど不要にし、ドアツ−ドアの所要時間を短縮し、結果的に走行速度がそれほど早くなくとも、高速化が実現できるのである。

  15. 以上の評価基準を纏めて掲げれば、以下のようになる。
     安全性
     大量性
     高速性・・・・・・所要時間の短縮は、その2乗に逆比例して、交通量を増加させる。
     確実性(正確性)・時間通り確実に目的地に到着すること
     経済性(低廉性)
     快適性・・・・・・ 通勤時間が片道1時間を超えると疲労度は増大するといわれる。
                混雑度は250〜260%が限度である。
     機動性

補遺:交通混雑の実態

[電車内における混雑度]
混雑度
混 雑 の 状 況
100% 吊革、ドア付近の柱や手摺をつかむことができる
150% 肩が触れ合い、吊革利用は半数程度、新聞は楽に読める
200% 身体が触れ合い、圧迫感が相当ある。週刊誌が何とか読める
250% 身動きができない
300% 物理的に限界に達し、身体に危険な状態
労働科学研究所調査による。

[電車区間の混雑度(昭和44年)]
大阪環状線(京橋〜桜の宮) 288%
山手線  (上野〜御徒町) 276%
常磐線 (三河島〜日暮里) 265%
総武線   (平井〜亀戸) 256%

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第5節 運輸業の概況

DETAIL
(1)運輸業とは (2)交通機関のライフサイクル (3)各期の特徴
(4)ライフサイクルと交通政策    
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(1)運輸業とは

  1. [運輸業の定義]
    1. 一定の交通手段を持って、一般公共の交通需要に応じて交通サービスを供給する事業を言う(今野四訂交通経済学P.71)。
    2. コーリン・クラークの産業分類では、運輸業は第三次産業に属する。
    3. しかし、@必要とする資本規模が大きい
          A機械化が可能であり、労働生産性向上の可能性をもつ
      という点で、通常の第三次産業とは様相を異にし、むしろ、第二次産業に近い性格をもつ。
    4. 運輸業の多くは、公益事業(Public Utility)でもある。
    5. 公益事業にはその他に郵便、電信電話、放送、電気、ガス、水道がある。
    6. 公益事業と見なされる交通事業には、鉄道業のすべてと、路線バス、内航定期船、定期航空の各事業がある。
  2. [わが国経済における運輸業(含む:通信)の地位]

    1. 就業者 6%(280万人) 有形固定資産18%(11兆3,000億円)昭和40年
      純生産額 8.8%(2兆2,000億円)

  3. [運輸業の就業人口]

  4. 国 名 交通部門就業人口 GDP成長率 就業人口増加率 国 名 交通部門就業人口 GDP成長率 就業人口増加率
    N.Z. 7.4   1.13  1.18  ポーランド 4.9   1.46  1.14 
    ハンガリ 6.7   1.21  1.09  イタリア  4.7   1.19  1.14 
    フィンランド 6.0   1.31  1.10  フランス  4.6   1.26  1.06 
    ベルギー 5.6   1.27  1.13  スペイン  4.4   1.37  1.62 
    日本  5.4   1.39  1.05  米国  4.1   1.16 -1.00 
    英国  5.4   1.15 -1.00  インド 2.4   1.17  1.10 
    出所:ILO「労働統計年鑑」1977, Transportation and Traffic
    備考:交通部門就業人口の数字は%、GDPと就業人口の成長率は1970-76年平均

  5. [わが国の交通企業]
  6.    大手13社+営団地下鉄 バス   乗合    354社
       貨物専用  26社        貸し切り  734社(1980年3月末)
    私鉄 中小私鉄  64社   ハイヤー 法人   7,346社
       公営    12社   タクシー 個人  46,936 (1980年3月末)
       モノレール等 4社   海運   外航中核5社、系列会社、専属会社
       路線    361社        内航   9,825社(1980)
    トラック 区域  30,852社 航空   日本航空、全日空、JAS
         特定   1,298社      日本貨物航空
         霊柩   1,483社
        トラック計33,994社(1980年3月末)

  7. [運輸業従事者数]
  8.       大手14社  61,500人
    私鉄    中小私鉄  19,700人
          公営    16,100人  計106,600人
    バス    乗合    158,525人
          貸し切り  50,950人 (1979年)
    ハイヤー  法人    483,480人 (1979年)
    タクシー  個人

    トラック  路線    91,672人
          区域    592,065人  計 672,618人(1978年)
    船員    職員    30,794人 (予備員を含む)
          部員    47,232人  計 78,026人(1979年)
          船内荷役  16,708人 
    港湾労働  はしけ    4,858人
          沿岸    24,102人 (1980年)
    航空          34,723人

  9. [マーケットシェアの変遷]

    **旅客**    平均輸送距離 S30年 S50年 S54年
    (1)単調減少型 国鉄  30.5km   55.0%→30.3%→25.0%
                     (27.3% 15.3% 13.5%)
            民鉄  10.3km   27.1%→15.3%→15.2%
                     (42.0% 22.8% 21.2%)
    (2)単調増加型 乗用車 14.2km   2.5%→35.3%→41.1%
                     (5.0% 38.3% 45.5%)
            航空  752.1km   0.1%→ 2.7%→30.3%
                     (0.0%  0.1% 30.3%)
    (3)増加頭打型 バス  10.3km   14.1%→15.5%→13.9%
                     (25.2% 23.2% 19.4%)
    (4)減少食止型 旅客船 43.9km   1.2%→ 0.9%→ 3.9%
                     (0.5%  0.3%  0.1%)
    **貨物**

    (1)単調減少型 国鉄  30.5km   52.0%→13.7%→ 9.6%
                     (19.2%  3.1%  2.3%)
            民鉄  10.3km    0.8%→ 0.2%→ 0.1%
                     ( 4.0%  0.9%  0.8%)
    (2)単調増加型 トラック14.2km   11.6%→36.0%→39.1%
                     (68.4% 87.3% 88.2%)
    (3)増加頭打型 内航海運10.3km   35.5%→50.9%→51.1%
                     ( 8.3%  9.0%  8.6%)
    ()内はトン又は人ベース、他はトンキロ又は人キロベース

  10. [貨物平均輸送距離の推移]
  11.       S30年  S50年
    国鉄   283.5km 328.7km
    自動車   18.0km  29.5km
    民鉄    21.5km  18.0km
    内航海運 568.9km 406.1km

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(2)交通機関のライフサイクル

  1. [ライフサイクルの諸段階]
  2.   M. Fair & E. Williams, "Economics of Transportation",1950 による。
      (1)実験期 (2)初期拡張期 (3)急速発展期 (4)成熟期 (5)衰退期

  3. ライフサイクルの諸段階は、比較的自由な競争が展開されてきた米国等の交通先進国において、顕著に表れている。
  4. 「交通機関のライフサイクル」という考え方は、R. B. Prescott が1922年に著した、産業の成長過程についての考え方に影響されたものと思われる。
  5. そこでは次のような段階が提唱されている。
    (1)試験期 (2)社会組織への浸透期 (3)発展速度の減衰期 (4)安定期
    ゴンペルツ曲線(Benjamin Gompertz)1825年 

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(3)各期の特徴

  1. 実験期( experimental stage )
    1. 交通機関の3要素(通路・運搬具・動力)は小型・未発達であり、安全性や信頼性が低い。

    2. 投資が継続的に大きくなる。

    3. 能率が悪く料金も高い。利用者はきわめて少なく、投資が少ない。

    4. 従来の交通機関に対して補完的な機能しか果たさず、既存業者の妨害行為がある。
  2. 初期拡張期( stage of early extention )
    1. 技術的進歩がみられ、実用性が明らかになる。

    2. 投資が継続的に大きくなる。

    3. 国家の育成策が採られ始める。
  3. 急速発展期( stage of rapid extention )
    1. 技術のさらなる進歩によって、能率的大量輸送が可能になる。

    2. 大量輸送により、生産費の低下と料金の引き下げが行われる。

    3. 投機的な投資も行われ始める。

    4. 同一交通機関間の競争が激化し、国家的統制政策が採られ始める。

  4. 成熟期( stage of maturity )
    1. 新投資が緩慢になったり、停滞する。

    2. 同業者間で時間表や、サービス、運賃決定、労働条件に関して、協力・調整が問題になる。

    3. そのために、自主的統制や国家的統制が本格化する。

    4. 技術革新によって、利潤率の低下防止に務める。
  5. 衰退期( stage of decadence )
    1. 産業の利潤率が低下し、輸送量が減少する。

    2. ただし、この期に入っても、滅び消滅することはない。
  6. 米国における交通機関のライフサイクル
  7.   実験期 初期拡張期 急速発展期 成熟期 衰退期
    河川汽船 1795〜1815 1815〜1839 1839〜1850 1850〜1870 1870〜 
    海洋汽船 1810〜1830 1830〜1860 1860〜1916 1916〜       
    蒸気鉄道 1829〜1850 1850〜1870 1870〜1890 1890〜1924 1924〜 
    電車   1881〜1890 1890〜1900 1900〜1910 1910〜1922 1922〜 
    道路 1884〜1908 1908〜1938 1928〜1953 1953〜   
    航空機 1903〜1925 1925〜1935 1935〜      
       原資料:M. Fair & E. Williams "Economics of Transportation",1950,p.41
           今野源八郎「四訂 交通経済学」p.74

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(4)ライフサイクル論の政策的意味

  1. 陳腐化した交通機関に対して、「既に莫大な資本が投下されている」という理由のみから、非能率的な交通機関に不必要な保護を加え、国費を追加投資することは問題であろう(今野 p.76)。

  2. 今野博士の主張は、わが国でも既に役目を終えた「鉄道」になお期待して、多大な投資をするのはやめるべきである、もっと率直に言えば、新幹線の建設はもう止めて、道路と航空輸送に国費を投入すべきだと言うのである。

  3. 博士は新幹線を「現代の戦艦大和」に例えてもいる。

  4. 国鉄がJR7社に分割・民営化されて後、JR東日本とJR東海は比較的業績好調である。

  5. しかし、鉄道がわが国の主要な交通手段たる役割を終えたことは、私も認めざるを得ない。

  6. 今後おそらく、旅客輸送に関して「近距離は自家用車が、中・遠距離は航空機が担う」傾向がますます明確になってくるだろう。
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*** 日米航空会社の生き残り策 ***

日本

 1994年3月期:日本航空=二百数十億円の赤字(3年連続赤字)
 の経常損益  日本エアシステム(JAS)=赤字126億円(2年連続赤字)
        全日空=30億円弱の黒字(機体をリース会社に売却し、再度借り
            る方法で黒字だが、実質は赤字

  収支悪化 :直接的には「客離れ」、間接的には「規制緩和」
  の原因   日航の座席利用率 72.4%(1991年度)->63.7%(1993年度)に低下
                 損益分岐点は70%弱という

  対応策  :来年度客室乗務員(スチュワーデス)等の新規採用見送り(3社とも)
       JAL=希望退職550人募る。対象30歳以上。今後4年間で日本人を
          1400人減、外国人500人増
       ANA=給与抑制のため新客室乗務員は別会社での採用を検討中。
       提携=JALとANAは1995年度から導入のB777型機の予備部品を共有
       国際線乗継ぎ便で外国航空会社との共同運航を増やす(JAL,ANA)
       JAS=成田〜ホノルル線運休(1994年6月より)しホノルル支店閉鎖
          、同社の国際線は3路線(当路線を含む)

運輸省の政策転換

1985年:航空3社の「棲み分け」を廃止して競争促進政策に転換、ANAとJASを国際線に進出させる。

米国

デルタ航空(米国第3位):15,000人(全従業員の20%)の人員削減案発表
             1994年第1四半期7,790万$の最終損失計上
ユナイテッド航空(第3位):1994年第1四半期7,100万$の最終損失計上
             今後6年間平均14%の賃金カットと労働時間延長により、
             50億$のコスト削減を図る。労組が過半数の株式取得。

政策史

1978年:航空規制緩和法成立、路線、運賃、買収・合併が自由化
世界景気の低迷などでビジネス客が減少する一方、安売り競争が激化

対応策

(1)労組を取り込み、機内サービス削減によるコスト削減を図る
サウスウェスト航空(唯一黒字経営を続ける中堅企業)
   「ノー・フリル」(機内サービスを省く)方式で運賃を安くし、急速に事業規模を拡大している。
ノースウェスト航空(第4位):発行株式の37%を労組に渡す渡す。
(2)外国航空会社との関係強化による利用客に囲い込み
アメリカン航空(第1位)はカナディアン航空に1億7,900万$出資
ユナイテッド航空とルフトハンザ航空:予約業務の共通化、共同運航を内容とする業務提携(米国運輸省認可済み)
コンチネンタル航空とアリタリア航空、業務提携を発表
英国航空がUSエアに、KLMオランダ航空がノースウェストに、エア・カナダ(同1位)がコンチネンタルに出資している。
以上、朝日1994.5.5

 

耐久消費財保有状況調査(1993年度末):経済企画庁

普及率:所有している世帯数の割合
全国5040世帯を対象に1994年3月末実施

[普及率の伸びが顕著なもの]
衛生放送受信装置 26.6%(21.3%)と全自動洗濯機
カラーテレビ 99%以上前年度末とほとんど変わらない。
ただし29型以上の大型テレビ 38.0%(33.6%)
電気洗濯機 99%以上前年度末とほとんど変わらない。
ただし、全自動洗濯機 53.4%(49.3%)
ビデオカメラ 29.9%(25.6%)
温水洗浄便座 21.3%(17.6%)

[普及率は伸びないが、1世帯で複数所有するケースが増えているもの]
冷暖房用ルームエアコン 48.5%だが、100世帯当たり保有台数 84.3台(78.3台)
温風ヒータ
乗用車 79.9%、100世帯当たり保有台数 116.2台で前年度末とほとんど変わらない。
括弧内は1992年度末調査データ
朝日1994.5.9