モン・スニ峠の湖 (1997年)

 モン・スニ峠 (2081m)も、『アルプス登攀記』に登場する。というより、私にとって、正しくは、それを読んで、いつかぜひここに来たい、という思いを抱いた。私たちはブリヤンソンからフランスを出て、一旦イタリアに入り、再び国境を越えて峠に上った。『登攀記』の時代には、モン・スニ峠は重要な交通路だったようだが、私が訪れたときには、途中すれ違う車は数えるほどしかなかった。

 峠には、写真のように、エメラルドグリーンの湖がある。摩周湖のように、まったく静かで、厳粛な神秘性を感じた。『日本百名山』のリバイバルで、どこもにぎわっている日本の山と違って、フランスアルプスの人影はまばらだった。このような山の景色なら、ごまんとあるからありがたみを感じない、ということなのかもしれない。ともあれ、一般のフランス人に関して、海に較べて、山への関心は低いようである。

 

 峠の上には、小さな博物館があって、この道を切り開くのがいかに難事業だったか、さまざまな展示物で紹介されている。その博物館の脇に、数種類の高山植物の花壇があって、エーデルワイスが植えられていた。

 自分では、わりにヨーロッパアルプスをハイキングした方だと思っているが(軽装で半日歩き程度のもの)、これまで一度もエーデルワイスに出会ったことがなかった。これは野生のものではなかったが、本物は本物である。感動した。

  以下は、この旅の途上(1997年)、あちこちのヨーロッパアルプスで撮った高山植物である。