サン・ポール・ドゥ・ヴァンス (2010年)

 エズとならぶ「鷹ノ巣村」だが、こちらの方がずっと広く大きい。なだらかな丘の上にあり、エズのような孤絶した感じはない。全体に穏やかで優しい印象がする。村からの眺めは、エズの方が格段に優れているが、外から眺める村のたたずまいは、サン・ポールの方が美しい。また、街並みを見、買い物を楽しむなら、サン・ポールだろう。アートを売る店が多く、商店も全体により洗練されている。

 下左は、村の墓地。墓地の先に青く見えるのが地中海。村の墓地にはシャガールの墓がある。彼は晩年サン・ポールに移り住み、この地に没した。ローズマリーが垂れかかる以外、何の特徴もない。しかし、青々としたローズマリーには、小さな薄紫の花が咲き、葉からは年中素晴らしい芳香が漂う。誰が手を入れているのか、こんもりと形よく育ったこの木に、頭をすっぽり包まれて眠っている。いい墓だな、と思う。

 村から見る山側の景色(下左)と、糸杉の並木から見たサン・ポール。