サン・ラファエル (1997年)

 サン・ラファエルは、映画祭で有名なカンヌと金持ちが集まるサン・トロペのほぼ中間にある。庶民的なのんびりした避暑地で、娯楽施設がないせいか人もあまり多くない。ただボーッと時間を過ごしたい人にはお薦めである。宿の初老のマダムは、あなたがたは私のホテルに来た2番目の日本人だ、といった。1番でないのが残念だったが、いまや日本人が行っていないところはないと言えるほど、どんなところにも必ず進出している好奇心と探究心の強い民族のことだから、こんな普通の場所で、小さなホテルとはいえ、2番目というのは光栄なことかもしれない。

 このあたりの岩は、赤茶色の顔料で染めたようなどぎつい色をしている。そういえば、私の記憶では、アルミニウムが初めて精製されたときの原料鉱石ボーキサイトは、南仏産だったと思う。まさに、そのボーキサイトの色なのである。

 サン・ラファエルに来る途中で見た岩山の景色。

   サン・ラファエルからカンヌの方を見た風景。時折海に入っては陸に上がり、ほとんど海辺に寝そべっているちょっと気だるそうな様子が、いかにもコート・ダジュールである。