レ島はラ・ロシェルの目の前に浮かぶ干潟のような島である。日本の沿岸に浮かぶ島々に見られる小山、ないしは盛り上がり、というものがまったくなく、その海岸には波が打ち砕かれる大きな黒い岩もない。どこまでも平坦で、ところどころ白い岩肌が露出する石灰岩質の島であった。島の長さは25km、幅は5kmある。北海道の礼文島が21kmと6kmであるから、それと同じくらいの島である。1988年、レ島は橋で本土と結ばれた。フランスではめずらしく有料の橋であった。

 橋の上からの眺め。走行中の車の窓から撮った。橋は高速道路になっており、人が徒歩で渡ることはできない。

 島にはブドウ畑が多く見られたが、海岸に近い木立が茂っているあたりには、別荘と思われる家も見受けられた。そうした一軒の家の庭にミモザが植えられていて、今まさに花の盛りだった。

 島の海岸には海草がいっぱい生えている。その海草の間に多くの海の幸があるのだろう。海岸の防波堤に作られたこの石の小屋には、火がたけるよう煙突があけられていた。漁師たちは、海で冷えた体温をここで温めたのかもしれない。

 海岸からはるか向こうの本土を眺めていたら、漁師が小さなかごを持って海から上がってきた。何を持っているのか、見せてもらうと、蛤や赤貝のような二枚貝であった。素朴で親切なフランス人で、ひとつひとつ貝の名前を教えてくれた。言葉と言葉との間合いが街の人とは違っていた。普段は口数の少ない人に違いない。かごには海草が敷かれ、その上の貝にまた海草がかけられていた。「こうやっておくと新鮮なんだ」とのことであった。多分、海草が保冷剤の役割を果たすのだろう。日本とは違った海草の使い方である。