自然史博物館の正門 (2010年)
19世紀後半を代表するものはいろいろあるが、自然史博物館もその一つだろう。19世紀後半は科学礼賛の時代であった。科学の限界が見えず科学の未来を、進歩を、信じていた時代であった。文学にさえ科学が入り、ゾラは「遺伝」と「環境」をルゴン・マーカッカール叢書の原理にした。また19世紀後半は帝国主義が始まる時代でもあった。「進歩」の思想が、文明の進んだ者は遅れた者を導く権利があると、支配を正当化した。その科学と帝国主義との両方の遺産を自然史博物館に見る、といったら大袈裟であろうか。
ここには世界中から集められた(あるいは持ってきた)大変な数の骨格標本がある。上野の博物館にはこの数十分の一もないと思う。しかも、展示されているのは、おそらく価値の高いものだけだろう。イギリスでも同じ感慨を抱いたが、「帝国」のコレクションの底知れなさを感じさせる。