モンマルトル、サクレ・クール寺院 (1997年)
私の連想では、モンマルトル、ユトリロ、サクレ・クール寺院、と接合する。世代的なものかもしれない。多分、同じ年代の人はそうではないでしょうか? とにかく、エッフェル塔がパリの象徴なら、サクレ・クール寺院はモンマルトルの象徴で、それが日本で広く一般化したのは、一時期ユトリロが流行したことと関係があり、それは私の少年時代のことだ、ということである。そのせいか、つまり教養などない小さな頃から知っているせいか、私は、サクレ・クール寺院というのは、パリの古い教会だと思っていた。そもそも、建築作品としての教会を別にすれば、有名な教会に新しい教会などない。ロマネスクとかゴシックとかルネッサンスとかバロックとか、新しくとも200年くらいは経っているのが普通なのである。ところが、調べてみると、このサクレ・クール寺院ができたのは20世紀、それも第一次大戦後である。教会の聖別式が挙行されたのは、1919年、とフランスの百科事典に記されている。まだ100年も経っていない。エッフェル塔よりも新しいのである。これは驚きではないだろうか。これだけわずかの間に、これだけ文化的に溶け込んで、象徴とさえ言われる地位を獲得した教会建築が他にあるだろうか。
モンマルトルの丘からの眺め (2005年)