ムーラン・ドゥ・ラ・ギャレット (2005年)

 エッフェル塔が建てられた1889年、モンマルトルに次々にキャバレーがオープンする。今なお観光客でにぎわうムーラン・ルージュを筆頭に、フォーリー・ベルジェール、ムーラン・ドゥ・ラ・ギャレット。モンマルトルが、大歓楽街へと変化するスタートの年である。それまで、モンマルトルは、ブドウ畑が広がる、ひなびた町外れでしかなかった。

 さて、印象派の絵が好きな人なら、この三つのキャバレーの名を聞いて、すぐにロートレック、マネ、ルノワールの名が浮かぶだろう。ロートレックの最も名高い作品は、ムーランルージュのポスター(下A)であろうし、マネの最後の作品は「フォーリー・ベルジェール」(下B)である。そして、初期のルノワールを代表するのが「ムーラン・ドゥ・ラ・ギャレット」(下@)で、このキャバレーの庭を舞台にしている。

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 しかし、ムーラン・ドゥ・ラ・ギャレットはルノワールの占有ではない。当時、キャバレーの「主(ぬし)」的存在だったロートレックも、何枚もここを描いている。また、パリに出てきてまもない頃のゴッホも描いている。何てすばらしい歴史を持ったキャバレーか、とため息が出るが、今は見る影もない。それがまた歴史のいいところなのかもしれない。

     

      

 上二枚はロートレックが店内を描いたもの。下はゴッホ。