コンコルド広場側から見た、シャンゼリゼ大通 (1997年)

 ある夏の夕方、私は、コンコルド広場に接するシャンゼリゼ大通東端の横断歩道の真ん中を、つまり中央分離帯のところを、たまたま9時ちょうどに通ったことがある。それはパリの街灯が点灯する時間であった。写真では、街路樹のせいで、街灯がどこにあるのか分かりづらいが、ともかく、大通りには、街灯があって、道を明るく照らすのである、正確に9時から。点灯の瞬間、私は反射的にシャンゼリゼの方を見た、いや、そういう気がした。が、おそらくは、ぼーとシャンゼリゼの方を見ていて、その瞬間に、一挙に感覚が覚醒し、跳ね上がったのだろう。「あ !!!」 いっせいに点った光の帯が、凱旋門をくぐって空に抜けてゆくような錯覚を覚えた。遠近法のせいだろう。しかし、身震いするような感動を覚えた。

 凱旋門の上から見たシャンゼリゼ大通り (1997年)

 凱旋門の上に登ると正面に一直線にシャンゼリゼ大通がルーヴルへと抜けている。凱旋門はなだらかな丘の頂上にあるから、門の上からの眺めは、その高さ以上のものがある。

 凱旋門から、はるか遠くまで見渡せる街並みを見下ろしながら、ふと、彼方の地平線の上に目をやると、夏のパリの空もひどく美しいのに気がついた。