ポン・ヌフ (1997年)

  この橋は、パリ最古の橋である。しかし、名前を「ポン・ヌフ=新橋」という。

  ポン・ヌフができるまで、パリの橋は木造で、橋の上には商店が建ち並び、そこに人が暮らしていた。そのため、いくども失火によって橋は焼け落ち、そのたびに市民は大変難儀した。また、船が橋げたに衝突したり、厳冬期に氷がぶつかって、壊れることもあったという。ともあれ、木の橋は長持ちしない。そこで作られたのが頑丈な石橋だった。1578年に着工し、24年の歳月を費やして1602年に完成した。初めて石で造られた画期的橋だったから、「新橋」なのである。

 まだポン・ヌフができる以前のシテ島の橋。この版画を見ると、橋の上にたくさんの建物があったのがわかる。橋は、商売をするには、当時最高のロケーションであった。ともかく、人があちこちから集まって来て、次々に店の前を通る。橋の上には両替商や貴金属商、またアクセサリーを売る店などが軒を並べていた。いい場所には、儲かる商売の店が建ち並ぶ。それは今も昔も変わらぬ事実である。フィレンツェのポンテ・ヴェッキオ、ヴェネチアのリアルト橋には昔の名残がいまも残っている。