ディエップのファレーズ La falaise de Dieppe  上は南西側、下は北東側 (2010年)

 エトルタとディエップとの間には、直線距離にして70km以上の距離があるが、ファレーズはまだ続いている。やはりデェエップも、この断崖が途切れた地に開けている。しかし、ここはエトルタよりも広く大きく、漁業も健在で、港の近くには、魚料理のレストランが一塊りになって店を開けていた。夏は海水浴客でにぎわうらしく、砂利の海岸(砂浜ではない)に面した大通りには、ホテルやリゾートマンションが建ち並んでいる。このホテル街とレストラン街との間に少し距離があるのが、ここの特徴かもしれない。(レストラン街は港近くの旧市街にあり、ホテル街は海岸沿いのいわば新興リゾート地、ということになる)

 町のレストランで、われわれはセットメニューから、アントレにスープ・ドウ・ポワソン(魚のシチュー)とドゥミ・オマール(オマール海老の半身)を注文した。これはけっこううまかった。(なお、スープ・ドウ・ポワソンとムール・マリニエール[ムール貝の白ワイン蒸し] は、どこにいっても、もしメニューにあれば、まずはずれがない。けっこううまい店と笑みがこぼれるほどうまい店があるだけである) しかし、続く魚のメインディッシュは、ここでも、うまいとは言えなかった。私は高級レストランに入ったことがないので、一般的レストランの一般的価格の料理に限定するが、ヨーロッパではメインディッシュで日本人の口に合う魚料理に出合ったことがない。ほどほどにうまいのはあったが、ううー・うまい、と感動したことが一度もない。概して味がなく、塩をかけレモンをかけて味つけするが、それでは全然魚の本来のうまみが引き出せておらず、というよりむしろ、どこかで抜き去られてしまっているような具合で、良くいえば単純素朴、ありていに言えばなにか素っ気ない気の抜けたような料理ばかりだった。メインディッシュについては、だんだん、魚はやめよー、と、ますますおいしいものに遭遇する機会を狭める結果になっている。正直、魚料理は、味も種類も調理法も、やっぱり日本が圧倒的に豊富で、一番うまい、というのが率直なところである。