ユッセ城は、ディズニーの『眠れる森の美女』のモデルとなった城らしい。パンフレットにそう書かれている。
アンドル川が脇を流れていて森の真ん中にないところが少々童話とは違うが、なるほど、ユッセの城の雰囲気はまさしくこれだと納得させるものがある。
もう10年以上も前になるが、17世紀のシャルル・ペローのフランス語を平明な現代フランス語訳に直した童話集を、授業で使ったことがあった。どれもみな有名な話ばかりで、中味を知っているものを読んでもつまらない、とは思ったが、学生には、逆にそれが読解の興味を引き出すだろう、と考えた。
ところが、読んでみると、大人にも十分面白かったのである。
子供の興味と大人の興味はまったく異なる。幼い子供が夢中になるたわいない話の展開にどきどきはしない。しかし、童話に見られる言葉の効果的な反復法や、話の盛り上げ方のテクニックには、あらゆる国の文学に共通するある普遍的な型があるように思われ、それが分かった気になってとても興味深かった。また、いくつかの描写はきわめて美しく、とりわけ、『青髭』と『眠れる森の美女』には、要所要所に詩的なイメージを喚起するくだりがあった。その中でも、私は、特に、『眠れる森の美女』の、王子が、いばらの密生している森に分け入るとき、城に向かう王子の前で、暗い森の道が裂けるように開いてゆき、王子が通過し終えると、それが再び閉じてゆく、という部分の描写に感動した。記憶力の悪い私には、ここで原文を引用することも正確な訳文を記すこともできないが、ともかく大変美しいイメージだった。この教科書を使用した数年間、私は、形式を変えつつも、常にそこを試験に出した。学生には、たぶん、私の意図が伝わらなかったとは思うが。