ショーモン城 (2005年)

 ロワール河の左岸が小高い丘になっているあたりに、ショーモンの城がある。アンボワーズ家のシャルル1世とその息子シャルル2世が15世紀末から16世紀初めにかけて建てたものという。

 サン・バルテルミーの虐殺で悪名高いカトリーヌ・ドゥ・メディシスは、夫の国王アンリ2世亡き後、王の愛人であったディアンヌ・ドゥ・ポワチエから優美なシュノンソー城を奪うにあたり、代償として、この城を与えている。シュノンソーとの比較では分が悪いが、ショーモンもすばらしい城である。

 左端にわずかに見えるのがロワール河。

 シュノンソーが川の上にあったのに対し、ショーモンは河を眼下に見下ろす絶好のヴューポイントにある。私はどっちもいいナー、と思う。だから、そんなにひどい仕打ちでもないじゃないか、と、常に悪人に仕立て上げられるカトリーヌ・ドゥ・メディシスの肩を持ちたい気になる。しかし、城替えを命じられるディアンヌにとっては、たとえメディシスの夫を奪ったとはいえ、権力をかさに、江戸の敵を長崎で、みたいな、許しがたい仕打ちに思えるだろう。ただ、耐えて、我慢して、という城でないことは、誰が見てもわかる。シュノンソーほどではないにしろ、ちょっと相当にエレガントな姿で、ここに来てみれば、なんだ話が違うじゃないかという気持ちは、誰しも多少なりは持つのではなかろうか。それでも、もし、欠けたものがあるとすれば、庭園だが、それは造ろうと思えばいつでも城の前に広い土地が空いている。といっても、また1からでは、気持がくじけるかナ・・・。