アゼイ・ル・リドは小さな美しい城館である。バルザックの小説にも登場するが、特に記すべき歴史はない。王族や大貴族が造営したものではないからである。周囲の自然がそれを醸しているのか、静かで落ち着いて、どこか控えめな雰囲気がある。エピソードがないことが、むしろ小粒のダイヤのようなこの城館には合っている気がする。
アゼイ・ル・リドの池の傍らの、庭と呼ぶにはあまりにも無造作な芝生には、日本の高山植物の黒百合に似た花弁の厚い珍しい植物が群生していた。