カンカルからしばらく北上すると、ポワント・デュ・グルーワンという岬がある。週末のせいか、たくさんのフランス人が家族で遠足に来ていた。日本と少々様子が違うのは、駐車場にはさまざまなキャンピングカーが並ぶことである。土曜に来て、ゆっくり一泊して楽しむのだろう。ミシュランには、レストラン・ホテル案内ばかりでなく、キャンピング場案内もある。こちらにも星がつくが、レストランのように、三つ星が二つ星になってシェフが自殺する、というようなことはけっして起こるまい。そもそもキャンピング場の多くが、最盛期をのぞき、無人である。その評価の基準は知らないが、日本人として願わくば、ぜひトイレの設備を入れてほしい。こちらに来て一番困るのが、トイレが少ない、あれば汚い、また、まともなトイレはばしば有料である、ということである。小銭がないとき、有料には本当に困惑する。
ポワン・デュ・グルーワンからサン・マロに向かう途中、こんな景色に出会った。潮が満ちれば、館は海の上に浮かぶだろう。なんてすばらしい、こんなところに住むのは夢のようだ。だが、通勤や買い物はさぞ不便だろうな、と、つい俗なことを考えた。自然の中で美しく暮らすには、財産だけでなく、そんな不便は一切気にしない別の気構えが必要なのである。憧れるが、怠惰な私にはきっと駄目だな、と、慰めるでもなく考えた。