ブルターニュ半島の西にある有名な軍港ブレストの、対岸にある半島をクロゾン半島という。その半島は、先端でまた鳥の足のように3つに分かれ、地図で見ると、それぞれの突端はみななかなか眺めがよさそうである。そこで、まず一番北の「スペイン人岬 Pointe des Espagnols」に向かうべく、海に沿って北上していたら、「死者の島 Ile des Morts」という不吉な名の島が見えてきた。「死者の島」といえば、すぐにベックリンの絵を思い浮かべるが、ベックリンの絵のモチーフになったのはイタリアのオルタ湖で、97年にそこを訪れて、あまりの静寂になるほどと納得した。こちらは、名前は同じだが様子はだいぶ違う。調べることができなかったが、古い由緒のありそうな倉庫のような3つの建物が並ぶ小さな島で、名前から、かつて死者を埋葬していた島なのかもしれない。瀕死のアーサー王がアヴァロンの島に船出する物語を思い浮かべながら、この不吉な名の島は、同じケルト人たちが住むブルターニュの風土に妙に合っている気がした。

左はベックリンの「死者の島」。右はそのモデルといわれるイタリアのオルタ湖。 下3枚、ブルターニュの「死者の島」