ル・ピュイのサン・ミッシェル・デギル礼拝堂 La Chapelle de Saint-Michel d'Aiguilhe  /(2010年)

  

  ル・ピュイは、4つあるサン・チャゴ・コンポステーラ巡礼路の起点の一つである。ここをスタートして、コンク、カオール、モワサックと、南西に向かい、ピレネーを越える。私は南東方向から車でル・ピュイに入ったが、遠くからでも小山の上のサン・ミッシェル・デギル礼拝堂が視認でき、町までの距離がわかった。かつて徒歩で巡礼に集まってくる人たちにとっては、得難いランドマークであったろう。ところが、町の中心に入るとそれが見えなくなった。市庁舎前の駐車場に車を止め、ノートルダム大聖堂を見た後、どう行けば礼拝堂まで行けるのか分からず、人に尋ねる始末である。つまり、とても高いところに建立されていそうに見えるが、実はそれほど高くない、ということである。

 旧市街に入ると、巡礼路の起点らしく、やはり宗教的雰囲気を感じる。ノートルダム大聖堂へ向かう参道には巡礼に関わる杖とかレースの被りものとかの店があり、またおそらく宿泊の世話をするのだろう、巡礼専門の旅行代理店のようなものもあった。このような代理店を見るのも、その存在を知ったのも初めてのことだった。下のホタテガイ三つの看板の店がそれで、巡礼中継地になる教会のポスターなどが張られていた。

 ホタテガイは、フランス語で「コキーユ・ドゥ・サン・ジャック」といい、直訳すると「聖ヤコブの貝」という意味になる。「サンチャゴ」はスペイン語で聖ヤコブのことであるから、ホタテガイは巡礼にぴったり、ということで、昔から巡礼する者は首からホタテガイを下げる習慣である。だから、この看板を見ると、すぐにこれは巡礼に関係する店だとわかる。そして、ショーウィンドをのぞくと、巡礼の旅行代理店! だったのである。

 

 巡礼の起点の教会、ノートルダム大聖堂(左)と大聖堂の中から街を見下ろした景色。