フランスとスペインの国境にまたがって、バスク地方と呼ばれる地域がある。スペイン側のバスク地方は、サン・セバスチャンのあるバスク自治州からパンプローナのあるナヴァーラ自治州にわたっており、そこにバスク人が約270万人いる。フランス側は、アキテーヌ地方南西部がそれに当たり、約35万人が居住しているといわれる。バスク人はルーツの分からぬ謎の民族である。彼らの言葉はインド・ヨーロッパ諸語とは異なる系統不明の言語とされる。
バイヨンヌは、そのバスク人の、フランス側の中心都市で、バスク博物館がある。しかし、長い歴史の間に混血したためか、私にはバスク人もフランス人もまったく見分けがつかなかった。翌日スペインに足を伸ばし、サン・セバスチャンとパンプローナにも行ってみたが、そこでも、バスク人とスペイン人の見分けはまったくつかなかった。唯一わかることは、黒い大きなベレー帽をかぶるのはバスク人だ、ということだけである。
バイヨンヌはアドゥール川の河口近くにひらけた都市 (2005年)
バイヨンヌの城と路線バス。路線バスのアルファベットに注目してもらいたい。この独特のAの文字はフランスとスペインのバスク地方のみで頻繁に見られた。おそらく伝統の文字スタイルなのである。
教会裏の小さな広場に設けられた噴水。ちょっとローマ帝国文化のにおいを感じさせる。
街の中心部にあるサント・マリー(聖マリア)教会。中ほどで少しゆがんでいるのは、1枚で収まりきれず、2枚の写真を合成したため。
教会の裏側。
生ハムがどこで最初に作られたのか知らないが、フランスでは生ハムを「バイヨンヌハム jambon de Bayonne」という。つまり、バイヨンヌがオリジンであり本場なのである。私がバイヨンヌを訪れた復活祭の祝日、広場では生ハムのフェスティバルが催されていた。おおぜいのバスク地方の生ハム職人が、自分たちの作った自慢の一品を展示即売していた。
カメラを向けたら、夫婦でポーズをとってくれた。二人がかぶっているのがバスクのベレー帽である。この店では生ハムのほか、バスク地方特産の唐辛子のような赤ピーマンを入れたフォワグラのテリーヌ(パテ)を売っていた。